セキュリティ・キャンプ全国大会参加メモ
セキュリティキャンプ系のイベントは初参加・初申し込みでした。
動機
- もともといろいろな「仕組み」を知るのが好きで、ものづくりをやっていた。
- 自分の興味に最も近いのがハードウェア関係で、純粋にどういう設計になっているのか、ソフトウェアがどうリソースを活用しているのかを知りたいと感じるため。
- 自分がいちばん慣れ親しんでいるハードウェアという切り口で、複雑な最先端のコンピューターサイエンスに至るまでの勉強を行いたいと感じた。
- セキュリティという観点から言っても、低レイヤーな部分を知ることは、ハードウェアを知ること、ひいては自分の知識の拡充と未来への応用につながると考えている。
感想(参加後、実施協議会へ提出したもの)
前提として、私自身は普段よりセキュリティに関することはやっておらず、今回の参加動機はどちらかと言うと技術的関心を深め、今後の活動においてより確度・質の高いプログラミングや設計を行いたいという動機からである。そのうえで感想を述べるとする。
全体的に、非常に貴重な体験ができた、というのが率直な感想である。
もちろん大学でも同じように技術に興味を持って活動している友人はいるが、セキュリティキャンプにおいては個々人の濃さ、全体の密度が全く違う。さも日常会話かのように(私含め日常会話のつもりだろうが)、俗に言う共通言語を使ってコミュニケーションをする姿が当たり前という空気はなかなか新鮮であった。そして、いわゆる著名人同士のみならず参加者やチューターとの間にも交流が見られるというのが最も印象的であった。言い換えると、「その業界感」を得られたというのが大きな収穫の一つである。こういった空気というのは、参加しなければわからず、そして同業者が集まらなければ生まれず、特に研究などでカンファレンスに参加することがほぼない私にとっては数少ない体験となった。加えて言えば、講師やチューターの方々の実績の高さが明確であるというのも刺激的であった。少しマニアックな技術本の著者であったり、未踏採択者であったりと、その筋の権威者のような方々がすぐそこで他の参加者に紛れて過ごしているというのも貴重だと感じる。短い間ではあるが、このような空間で過ごした経験は、セキュリティという分野に携わるかどうかにかかわらず、自分のの技術者としての意識を高める強い動機になった。
また、技術面においても選択肢、好奇心を広げる良い機会になったと感じる。
IT技術のセキュリティ技術の大きな考え方の一つとして、レイヤを下るという考え方があるといえるだろう。ユーザーが利用するレイヤーからどんどん掘り下げていくもので、ライブラリやLinuxカーネル、パケット構造、あるいはハードウェア上のCPUや信号、というふうに、根本へと迫ることがセキュリティ対策に求められるだろう。IT技術のセキュリティというものを考えるとき、このようなレイヤを跨いだ考え方は必要不可欠で、それはすなわちレイヤをまたいだ技術者にならなければIT技術のセキュリティを考えることは困難であるということである。今回のキャンプでは、普段はあまり意識しない、あるいは意識しても実感しにくい「レイヤを掘り下げる」という作業ができた。視野を横に広げるだけではなく、縦の視野も身につけるべきという意識付けは、確実に技術者としてのスキルアップに貢献するだろうと考える。
更に、いくつかの自分自身の課題も見えた。
簡潔に言うと、まず技術者といえども技術だけをやっていてはいけないということを強く実感した。例えば最新のウイルスの動向は人脈頼りであったり、「情報は発信する人のところに集まる」という言葉であったり、技術力と言えども、あるいは技術者だからこそアウトプットとコミュニケーションが重視される面があるというのを教わった。そして、これは自分にとっての大きな課題である。コミュニケーションというは非常に難しい。データやマシンと向き合ってあれこれ操作している方が楽である。だからこそ、それ以外のこともできる技術者は活躍できるのだと考える。 もう一つ、問題意識や課題設定が挙げられる。本キャンプでは様々な人のプレゼンテーションを聞く機会に恵まれた。「こういう問題があって」「私はこういうアプローチで解決をしています(しました)」という構成で説明していただいた。この良きの「問題」や「解決手段」たしかにと納得させられるだけのわかりやすさを持って説明していただいたことは、「人に伝えることのできる技術者」という姿勢を見せられたようでハッとするものがあった。加えて、どのような経緯や努力があってそれらの問題設定をし、解決したのかという疑問が強まったことも自分にとっては大きい。自分自身の課題として、世にどういう問題があるのか、という疑問さえもあまり持たないという点があり、目の前でこのような公演を聞くことができたというのは自分の意識改善のための良い一歩になるはずである。
加えて今後のキャリアを考えるにあたって良い判断材料になったと感じる。
そもそも今後自分が何を専門としていくのかということも定まっていない今、専門性を持ってどういうことをするのかという具体的なケースを見ることができたのは判断材料として良い経験になっただろう。この分野では専門家はどういう生き方をしているのか、という話は講義だけではわからず、直に合わないと聞けない話が多い。専門技術を持って活躍している人に囲まれ、自分もどのような人生を歩んでいくのだろうという疑問が解決されるわけではないが、セキュリティに進むか否かにかからず、尊敬できる技術者の生き様というものは大いに参考にしていきたい。
今後
本気でセキュリティ系の研究室に行こうか迷った(がメディア系にした)。やらないということはなく、これからも「仕組みを知っているのは常識」という観点から色々掘り下げて知識とし、必要な場面で活かしていきたい。